【証券分析9-3】株式の期待リターンの源泉は何か?

ファイナンス理論

なぜ、株式投資でリターンが得られるのか、経済成長や市場参加者の期待との関係で説明することはできますが、今回はもう少し違った視点で考えてみようと思います。
今回は、株式の収益源泉を資本主義の構造から考えてみます。

誰かが得をするということは誰かが損をする

よく、株式投資はプラスサムゲームだが、FXはゼロサムゲームだ、宝くじはマイナスサムゲームだなどと呼ばれます。これらは、それぞれのゲーム出られる全プレーヤーの収益の合計値が、プラスなのか、ゼロなのか、マイナスなのかを示しています。
宝くじはわかりやすいですが、購入者の購入合計額よりも、当選者の当選額の合計の方が少なく、そのほかの部分は、広告費や宝くじの販売利益などとなります。プレーヤーの収益合計だけを見るとマイナスになりますが、宝くじの販売者も含めると全体ではプラスマイナスゼロです。
FXは通貨の交換という性質を持つので、誰かが通貨を売っていれば、それを買っている人がいます。したがって、誰かの利益は誰かの損失となり、収益の合計はゼロになります。(コストは無視)
最後に株式投資ですが、これも一般的な株式取引の市場では誰かが買って、誰かが売っているので、FXと似た部分もあるのですが、株式の場合には、対象の企業が利益を出すことで、その利益は、投資家(=プレーヤー)に還元される点が異なります。したがって、資金提供の対価として、企業利益の一部を得ることができるのです。
株式市場という閉じた空間だけで考えると資金が増えるプラスサムに見えます。
ですが、宝くじの例では販売者が残りを奪っていたように、株式においても誰かから資金が減っているはずです。
ではいったい誰から投資家(資本家)に資金が流れているのでしょうか?

企業活動と労働

この問題を考えるために、まずは、企業の活動について考えます。
企業は労働者を雇って、製品を生産し、それを販売することで、利益を出します。
この時、搾取されている対象となり得るのは、労働者と消費者です。労働者も資本家も消費者になるので、一旦ここでは消費者についてはおいておいて、労働者について考えます。
企業は、基本的には、労働者自身が稼いでいる金額よりも少ない金額を賃金として労働者に支払います。もちろんそうでないケースも存在しますが、特に日本のように安定して雇用をし続けるためには、実際に労働者が稼いだ額(売り上げから賃金以外の費用を引いた額)よりも少ない額にしておかなければ、急に売り上げが減少した時に対応できません。(賃金はそれほど柔軟に変更できるわけではないので)
つまり、企業が(間接的に資金提供者である資本家が)利益変動というリスクを背負い、労働者に安定性を提供する一方で、企業は労働者に実際に稼ぐ額よりも少ない額で働いてもらえるのです。労働者は給料の変動に対するリスクプレミアムを支払っていると考えることができます。
したがって、労働者から、資本家にリスクプレミアムが支払われ、それが、株式のプラスの期待リターンにつながると缶ゲルことができるのではないでしょうか?
最もこのような議論を私自身が思いついたわけではなく、この労働者と資本家の関係は、カールマルクスの資本論で述べられている内容です。
現実はこれほど単純ではありませんが、基本原理として、このような構造があると考えると株式投資に対して、また新たな考えをできるようになるのではないでしょうか。

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