【証券分析7-4】フリーキャッシュフローモデル(FCFF)とは

ファイナンス理論

割引キャッシュフローを用いた株式価値評価として、前回は、FCFEを紹介しました。それと似た概念にFCFFというものがあります。今回は、FCFFとは何か、FCFEとの違いを踏まえながら確認していきます。

FCFF(Free Cash Flow to Firm)とは?

FCFF(Free Cash Flow to Firm)とは、企業全体の資本提供者に帰属するキャッシュフローを指します。
具体的には以下のようになります。


企業全体の資本提供者というのは、簡単に言うと、株主と債権者のことです。
これに対して、FCFE(Free Cash Flow to Equity)は、株主に帰属するフリー・キャッシュフローですので、債権者のことは考えません。


となります。違いは、負債増加額が存在するかどうかになります。

割引キャッシュフロー法による企業価値の算出

ここで、WACC(加重平均資本コスト)というのは以下のように計算されます

イメージとしては、負債コスト=債券の金利と株主コスト=株主の要求収益率を企業全体の資産の割合で混ぜ合わせたものになります。

これらの数式を用いて、企業価値を求めることができます。
しかし、これは株式価値ではありません。
株式価値を求めるには企業価値から負債価値を引く必要があります。

ここで必要になる株主の要求収益率はCAPMで求められる期待収益率が用いられることが多いです。

適用される割引率の違い

株主に帰属するキャッシュフローに着目するFCFEを使った割引キャッシュフロー法と異なり、企業全体のキャッシュフローに着目するFCFFを用いた割引キャッシュフローでは、適用される割引率が違います。

  • FCFFの割引率としては、企業全体のリスクを考慮した加重平均資本コスト(WACC)が使用されます。WACCは、株主資本と負債のコストを加重平均したものです。

  • FCFEの割引率としては、株主の要求収益率(株主資本コスト)が使用されます。これは、株主が投資に対して要求する収益率を示し、企業の株式の特定のリスクを反映します。

まとめ

ここまで、FCFEとFCFFの2種類のキャッシュフローに着目した割引キャッシュフロー法を紹介してきましたが、FCFEを用いる方法はエクイティDCF法、FCFFを用いる方法は、エンタープライズDCF法と呼ばれます。
どちらも割引キャッシュフロー法(DCF法)における重要な概念ですが、その算出方法細かな違いがあります。混同しやすいので、誰を対象としたキャッシュフローに着目しているのか意識して考えてみてください。

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