【証券分析3-2】なぜ接点ポートフォリオは市場ポートフォリオになるのか?

ファイナンス理論

前回は、CAPMの第一定理に従うと、接点ポートフォリオは時価総額加重のインデックスになることを紹介しましたが、今回はなぜ、その2つが一致するといえるのか考えていきたいと思います。

全員が接点ポートフォリオを持つとすると

平均分散アプローチに基づくと、無リスク資産が存在する場合、リスク資産の最適な投資比率は1パターンに決まり、そのポートフォリオを接点ポートフォリオと呼ぶことを前回は確認しました。
ここで、ポイントとなるのは、リスク資産の最適な配分は1パターンになるということです。
これは、もし、市場参加者全員が合理的に平均分散アプローチに基づいて意思決定するならば、全員が同じ比率で各資産や証券を保有するということになります。
もちろん各投資家によって、投資額は異なります。
投資家によって、許容できるリスクは異なりますが、無リスク資産が存在する場合、無リスク資産とリスク資産の割合を調整することで、最終的なポートフォリオのリスクを調整できるため、やはりリスク資産の最適な配分は全員同じになります。

単純化した世界で考えてみる

ここで、今、3つの証券、証券1,2,3 しか存在しない世界に3人の投資家A,B,Cしかいない単純化された世界があると考えてみましょう。
この時、各投資家が、各証券に投資する比率は全員同じで、
証券1:証券2:証券3 = 20%:30%:50%
であるとします。
各投資家のリスク許容度に応じて、無リスク資産の比率は異なりますので、ここでは投資家Aは無リスク資産に50%,Bは20%,Cは10%投資すると仮定します。
これと各投資家の投資額(A:2000万、B:2500万、C:4500万)を以下の表に整理すると
| | 投資金額 | 無リスク資産 | 証券1 | 証券2 | 証券3 |
| ——– | ——– | ———— | —— | —— | —— |
| 投資家A | 2000万 | 1000万 | 200万 | 300万 | 500万 |
| 投資家B | 2500万 | 500万 | 400万 | 600万 | 1000万 |
| 投資家C | 1億 | 1000万 | 1800万 | 2700万 | 4500万 |
| 時価総額 | | | 2400万 | 3600万 | 6000万 |

この時、各証券の投資額の合計である時価総額を見てみると、
証券1:証券2:証券3 = 2400万:3600万:6000万 = 20%:30%:50%となっている。
これはつまり、全員がリスク資産を同じ比率で持つと仮定すると。その時の各証券の投資比率と、時価総額は一致することを示しています。
これが、CAPM第1定理が示している、
安全が資産が存在するとき、市場均衡において、接点ポートフォリオは時価総額加重平均ポートフォリオ、すなわち、市場ポートフォリオと一致するということの意味になります。

接点ポートフォリオと市場ポートフォリオが一致するメリット

このCAPM第1定理は、証券市場分析において非常に重要な意味を持っています。前回紹介した平均分散アプローチに基づいて、接点ポートフォリオを求めようとする場合には、すべての資産のリターンとリスクの情報を得る必要があります。
しかし、リターンやリスクを知ることはそう簡単ではありません。過去の価格データから簡単に求められるのではと思うかもしれませんが、過去のデータを使って求めたリターンやリスクはあくまで、その観測期間に観測されたリターンとリスクであって、本来のリターンとリスク(未来も含む)とは異なっている可能性があります。実際、リターンやリスクは、計算期間によって、大きく変わることが知られています。
このように正確なリターンやリスクが求められないケースでは、どのようなデータを使うかによって、求める接点ポートフォリオの結果は大きく変わってしまいます。
しかし、接点ポートフォリオが市場ポートフォリオであることがわかっているならば、平均分散アプローチに基づく計算を行うことなく、各資産の最適な配分比率を決定できるのです。
つまり、このCAPM第1定理が成立すると仮定するならば、リスク資産は時価総額加重平均で、つまり、インデックスファンドなどを持っておけばいいということになりますね。

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