リスクパリティポートフォリオとは?
リスクパリティポートフォリオとは、ポートフォリオを構成する各資産のリスクが等しくなるようにそれぞれの資産の保有ウェイトを決定したポートフォリオです。
平均分散ポートフォリオなどは、分散共分散行列に加えて、期待リターンを推定する必要があります。一般的に、リターンの推定の方がリスクや相関の推定よりも推定誤差が大きくなりやすいとされています。したがって、リスクと相関のみ(すなわち分散共分散行列)を使って資産配分を決定することのできるリスクパリティポートフォリオは機関投資家などの戦略にも用いられます。
実際のパフォーマンスも過去のデータを用いた検証を含め良好であること方もよく用いられる手法になります。
ここでは、このリスクパリティポートフォリオのウェイト決定方法について説明していきます。
ポートフォリオのリスクと各資産のリスク寄与
まずは、ポートフォリオのリスクからスタートします。
資産iのウェイトを$w_{i}$
資産iとjの共分散を$\sigma_{ij}$
とすると、
ポートフォリオのリスクは
と表されます。ここで$\Sigma$は共分散行列を示しています。
2資産の場合
ここから、しばらくの議論は2資産で考えた方がわかりやすいため、まずは、2資産の場合で考えて、その後、多資産の場合に拡張していきたいと思います。
2資産の場合のリスクは、
です。
これを資産1に関する部分と資産2に関する部分に分解すると
となります。
ここで、リスクパリティポートフォリオとは、資産1に関するリスク部分と、資産2に関するリスク部分が等しいことであるので、
が条件となります。
正確には、リスクには$\sqrt{}$が必要になってきますが、資産1のリスク部分と資産2のリスク部分が等しいと考える場合には両者の$\sqrt{}$は無視することができます。
2資産の場合は、この式をさらに整理して、以下の方程式を解くことで、リスクパリティポートフォリオのウェイトを得ることができます。
2次方程式の公式にあてはめて整理すると、
$w_{1}>0$, $w_{2}>0$の条件を踏まえると、
2資産の場合は、かなりシンプルになりました。これはある資産のウェイトは別の資産のリスクとの比によって示されるということを意味しています。2資産の場合は、相関部分が互いに相殺されるので、このようにシンプルになります。
多資産への拡張
これを多資産の場合に拡張すると、
ですので、各資産ごとのリスクが等しくなるには、
がすべての資産iに対して等しくなる必要があります。
つまり、$w_{i}\sum_{j=1}^{n}w_{j}\sigma_{ij}$がn個集まれば$\sigma_{p}^{2}$に一致することを踏まえると、
これがn資産の場合のリスクパリティポートフォリオを構築する上で必要な条件になります。
偏微分(限界リスク寄与)を用いた導出
ここまでの議論を少し違うやり方で見てみます。
各資産のリスクが等しくなるようにするということは、各資産のリスク寄与が等しくなるということです。
リスク寄与は、ウェイトとウェイトが1単位増加した時に増加するリスクと考えられます。
ここで、資産iのウェイトが1単位増加した時に増加するリスクは、$\frac{\partial\sigma_{p}}{\partial w_{i}}$を示します。(限界リスク寄与)
つまり、資産iのリスク寄与は以下の式で定義できます。
これは、
という前項で求めた条件式を$\sigma_{p}$で割った結果と一致します。
ウェイトの計算方法
さて、ここまでで、リスクパリティポートフォリオを作るために満たされるべき条件式は見つかりました。
しかし、これを単純に解くのはなかなか難しそうです。
もちろん、2資産の場合は、各数値を代入するだけで、解になりますが、多資産の場合は難しいでしょう。
そこで、実際にこの条件を満たすウェイトを計算するためには、以下の最適化問題を解くことで解が得られることが知られています。
この最適化問題をPythonなどを使って、必要な各資産のウェイトを得ることができます。
次回は、実際にPythonでリスクパリティポートフォリオを作成してみたいと思います。