購買力平価と為替レートの関係についてPythonで分析

ファイナンス理論

購買力平価とは

購買力平価(PPP: Purchasing Power Parity)は、異なる国々の通貨の購買力を比較するための経済学的な理論です。この理論は、異なる国で同じ商品やサービスが同じ価格になるべきだという考え方に基づいています。
購買力平価に基づけば、異なる国の通貨の交換レートは、各国の物価水準を反映するべきだとされています。

購買力平価の基本概念

購買力平価は、以下の2つの主要な概念に分かれます。

  1. 絶対購買力平価:
    絶対購買力平価は、同じ商品やサービスが異なる国で同じ価格になるべきだという考え方に基づいています。例えば、アメリカで1ドルで購入できるハンバーガーが、他の国でも1ドル相当の通貨で購入できるとすれば、購買力平価が成り立っていると言えます。この理論は、物価の差が為替レートによって調整されるべきだとしています。

  2. 相対購買力平価:
    相対購買力平価は、異なる国の物価変動に基づいて為替レートがどのように変化するかを説明します。具体的には、物価が上昇すると、その国の通貨の価値が下がり、為替レートが調整されるという考え方です。これにより、物価上昇率の違いが為替レートに影響を与えるとされます。

ビックマック指数の例

ビックマック指数(Big Mac Index)は、購買力平価の考え方をわかりやすく示すために作られた指標です。イギリスの経済誌『エコノミスト』が開発したこの指数は、世界中のマクドナルドで販売されているビックマックの価格を比較することで、異なる通貨の購買力を測定します。

例えば、アメリカでビックマックが5ドルで販売されているとしましょう。一方、日本でビックマックが500円で販売されているとします。もしアメリカドルと日本円の為替レートが1ドル=100円であれば、ビックマック指数に基づく購買力平価は、1ドルでビックマックを購入できるはずだという理論に基づきます。しかし、実際の為替レートがこの理論と大きく異なる場合、例えば1ドル=120円であれば、日本円は過小評価されている、あるいはアメリカドルは過大評価されていると示唆されることになります。

購買力平価と為替レートの関係

購買力平価の理論によれば、為替レートは長期的に見て購買力平価に収束する傾向があります。つまり、短期的には為替レートが様々な要因(政治的な不安、経済指標の変動など)によって変動することがありますが、長期的には物価水準の違いを反映して安定するとされています。

例えば、ある国でインフレーションが急激に進行すると、その国の通貨の購買力が低下し、他の通貨に対して価値が減少します。これにより、為替レートが調整され、物価水準の変化が反映されるわけです。

購買力平価が成立しているのかPythonで分析してみる

それでは実際に、購買力平価が成立しているのか分析してみたいと思います。
購買力平価のデータは以下の国際通貨研究所のデータを使いました。
国際通貨研究所

import pandas as pd

# データURL
excel_url = "https://www.iima.or.jp/docs/ppp/pppdata.xlsx"

# Excelファイルを読み込む
df = pd.read_excel(excel_url,header=3)


data = pd.DataFrame()
for i in range(0,len(df.columns),7):
    df_ex = df.iloc[:,i:i+6]
    df_ex.columns = ['year','month','average','CPI','CGPI','EPI']
    df_ex = df_ex.dropna(how='all',subset=['average','CPI','CGPI','EPI'])
    df_ex['year'] = df_ex['year'].fillna(method='ffill')

    df_ex['date'] = (df_ex['year'].astype(int) * 100 + df_ex['month'].astype(int)).astype(str)
    data = pd.concat([data, df_ex])
data_plot = data.set_index('date')[['average','CPI','CGPI','EPI']]
data_plot.index = pd.to_datetime(data_plot.index,format='%Y%m')
data_plot.plot()

  • average:月次平均為替レート。これは月ごとに計算された為替レートの平均値です。
  • CPI:消費者物価指数(CPI)ベースの為替レート。物価の変動を考慮した為替レートです。
  • CGPI:商業物価指数(CGPI)ベースの為替レート。商業用物品の物価変動を反映した為替レートです。
  • EPI:エクスポート物価指数(EPI)ベースの為替レート。輸出用商品の物価変動を反映した為替レートです。

2010年ごろまではEPIと似たような動きをしていましたが、その後は購買力平価とは乖離してきている傾向があります。

ここでのコードはこちらのGoogleColabで確認できます。

購買力平価の限界

購買力平価の理論にはいくつかの限界があります。まず、理論は商品やサービスが異なる国で完全に同じであることを前提としていますが、実際には物価の差は商品やサービスの品質や市場の状況によって異なるため、完全な平価を実現することは難しいです。また、短期的な為替レートの変動は、購買力平価の理論だけでは説明しきれないことが多いです。

まとめ

購買力平価は、異なる国々の通貨の購買力を比較し、為替レートの長期的な動向を理解するための重要な理論です。ビックマック指数のような実例を用いることで、購買力平価の考え方がより具体的に理解できます。絶対購買力平価と相対購買力平価の考え方を用いることで、為替レートの変動を理解する手助けになります。しかし、現実の為替レートはさまざまな要因によって変動するため、購買力平価だけで全てを説明することは難しいこともあります。

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