今回は投資戦略をいくつかの種類に分類して、整理してみたいと思います。
パッシブ運用とアクティブ運用
投資戦略を分類する場合最も大きく分けるにはパッシブ運用とアクティブ運用の分類が良いのではないかと思います。
パッシブ運用は、目標とするベンチマークに連動するパフォーマンスを目指す運用手法になります。いわゆるインデックス投資と同じようなイメージです。例えば、S & P 500、MSCI ACWI, TOPIXといったような指数と同じようなパフォーマンスを目標としてポートフォリオを構築する戦略になります。
この戦略の背景としてはやはり CAPM の存在が大きいです。CAPMが成立していると仮定するならば全ての投資家は、パッシブ運用を行うことが合理的な投資行動になります。
また、実際にはCAPMのような理想的な状況は現実では成立していないとしても、アクティブ運用の多くが平均的にはパッシブ運用をアウトパフォームできないといった実証分析の結果から、パッシブ運用は好まれる傾向にもあります。
いずれにしてもパッシブ運用を行う根底の哲学としては、株式市場は基本的に効率的であり、情報収集や分析を行っても長期的に市場平均を上回るパフォーマンスを出すことは難しいという考えがあります。
さらに、実際の運用には様々なコストがかかるので、分析を行うコストや取引コストを考慮すると、多少収益の源泉が存在していたとしてもポストを考慮するとそれらの収益がなくなってしまうということもよくあります。
これとは対照的に、市場の価格には反映されていない情報があり、それらの情報をより早く知り、ミスプライスを発見することで、超過的な収益を得られると考えて投資を行うのがアクティブ運用になります。
アクティブ運用は目標とするベンチマークを上回る運用パフォーマンスを目指して運用を行います。例えば日本株のアクティブ運用であればTOPIXに勝つ運用を目指すといったようなイメージです。
アクティブ運用には様々な手法があります。これらの手法の詳細については後ほど紹介するとして、基本的にはアクティブ運用は情報収集や分析を通じて、まだ市場が反映していない情報をより早く見つけ、投資を行うことで、最終的にその情報が反映された時にリターンが得られるということをベースにしています。
アクティブ運用が活発になればその分、織り込まれない情報というものは少なくなり、より効率的な市場に近づくというのはやや皮肉なことかもしれません。
スマートベータ運用
近年ではこのパッシブ運用とアクティブ運用に加えてスマートベータ運用というものも注目されるようになりました。
スマートベータ運用はパッシブ運用とアクティブ運用の中間的なイメージになります。
パッシブ運用とアクティブ運用の考え方を、ポートフォリオ理論に照らし合わせて考えると、パッシブ運用が収益の源泉とするのは主に、ベータと呼ばれる市場変動に連動する部分になります。逆にアクティブ運用が収益の源泉とするのは、ベータでは説明されない、アルファと呼ばれる部分になります。
ロングバイアスのあるアクティブ運用の場合には、ベータ部分も収益に含まれることになりますが、パフォーマンスの評価においては、ベンチマークからどれだけプラスのパフォーマンスを出せたかということが重要になるので、α部分が注目されます。
スマートデータ運用は、ポートフォリオ理論と照らし合わせて考えるとベータ以外のファクターに着目した運用と捉えるのが分かりやすいと思います。CAPMの拡張としてマルチファクターモデルというものが存在することを以前の記事でも紹介しました。
この拡張においてはベータ以外にも様々なファクターが株式市場には存在すると考えます。そしてそれらのファクターはリスクプレミアムを持っており、ファクターにベッドすることで、βだけでは得られない追加的な収益を得るというのがスマートベータ運用です。
最近はスマートベータ指数と呼ばれるような指数も登場しているので、少しずつスマートベータ運用やファクター投資と呼ばれるものも浸透してきているかもしれません。例えばバリュー指数やモメンタム指数、最小分散指数、高配当利回り指数などと呼ばれるものがスマートベータ指数になります。
アクティブ運用を掘り下げて考えてみる
パッシブ運用とスマートベータ運用は、どういった指数やファクターを用いるかという意思決定はありますが、比較的自由度の低い運用方法になります。
一方でアクティブ運用は様々な手法があり、非常に複雑です。
ですがいくつかの種類も存在していますのでその部分をより深く見ていきたいと思います。
特にアクティブ運用の分類としてよく用いられる分類は、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチの2種類です。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは主にマクロ経済などに着目をして、国や地域セクター配分などを決定してから、そのためには個別銘柄をどのくらいもつといったような考えでポートフォリオを構築します。
これから景気が後退するから、債券を多く持ったり内需系の株を多く持った方がいいだろう、といったことや逆に、
これから景気が加速しそうだから、景気敏感株や、株式のウェイトを増やしておこう、新興国に投資をしよう
などといったような考えをするのがトップダウンアプローチになります。
ボトムアップアプローチ
逆にボトムアップアプローチは、個別の企業の分析を行い、その企業に投資をするかどうか判断をします。そしていくつもの有料企業を合わせたのがポートフォリオになるといったイメージです。個人投資家の場合はこちらの方がイメージしやすいかもしれません。
四季報や財務諸表などを読んで、この株に投資をするか何株買うか、といったことを考えて最終的なポートフォリオを作るのはボトムアップアプローチになります。
これら2つのアプローチは完全に独立しているというよりも、多くの場合はお互いに保管し合って使用されているというのが一般的です。
ある程度は将来の景気の見通しをイメージしながらも、その中でどの株式を買ったりするのかについては詳細の情報を収集したり財務諸表を見たりするかもしれません。
このようにして2つのアプローチをうまく組み合わせて行われる場合がほとんどです。
まとめ
今回は投資手法の大まかな分類であるアクティブ運用とパッシブ運用を紹介しました。
どういったどうして哲学を持つかによって選択すべき手法は異なります。
アクティブ運用は戦略の幅が非常に広く様々な運用手法が存在します。中でも大きな分類としてはトップダウンアプローチとボトムアップアプローチの2つがあります。
自分がどういった運用を行いたいのか一度立ち止まって考えてもいいかもしれません。