マルチステージビルドとは?
Dockerのマルチステージビルド(multi-stage build)は、Dockerイメージを効率的に作成するための手法です。通常のDockerビルドでは、アプリケーションのビルドやテスト、依存関係のインストールなどがすべて一つのイメージに含まれていましたが、マルチステージビルドを使うと、これらの作業を分離し、最終的に不要なファイルを除いた軽量なイメージを作成することができます。
なぜマルチステージビルドが必要か?
通常の方法でDockerイメージを作成すると、アプリケーションのビルドツールや中間ファイルがすべて最終イメージに含まれてしまいます。その結果、イメージサイズが大きくなり、デプロイに時間がかかったり、リソースを無駄に消費してしまうことがあります。
マルチステージビルドでは、複数のステージを使って最終的に必要なファイルのみを含むイメージを作成できます。これにより、イメージサイズを削減し、効率的なデプロイが可能になります。
マルチステージビルドの基本的な構造
マルチステージビルドは、Dockerfile内で複数の FROM
を使うことで構成します。例えば、最初のステージではアプリケーションをビルドし、次のステージではその成果物だけをコピーして実行するイメージを作成します。
マルチステージビルドの基本的な例を見てみます。
# 1つ目のステージ: ビルド用
FROM golang:1.17 AS builder
WORKDIR /app
# 依存関係をインストール
COPY go.mod go.sum ./
RUN go mod download
# アプリケーションのビルド
COPY . .
RUN go build -o myapp
# 2つ目のステージ: 実行用
FROM alpine:latest
WORKDIR /root/
# ビルド済みのバイナリだけをコピー
COPY --from=builder /app/myapp .
# 実行コマンド
CMD ["./myapp"]
このDockerfileでは、以下の流れでイメージが作成されます:
- 最初の
golang:1.17
イメージでアプリケーションをビルドします。 - ビルドが完了した後、2つ目の
alpine:latest
イメージにビルドされた成果物(myapp
)をコピーします。 - 最終的なイメージには
alpine
だけがベースとなり、Go言語のツールや中間ファイルは含まれません。
マルチステージビルドのメリット
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軽量なイメージ作成
不要なビルドツールやライブラリを除外することで、イメージサイズを小さくできます。これにより、イメージのプルやプッシュが高速になり、デプロイ時間が短縮されます。 -
セキュリティ向上
ビルド時にのみ必要なツールが最終イメージに含まれないため、セキュリティのリスクを低減できます。 -
Dockerfileの可読性向上
マルチステージビルドにより、ビルドと実行環境を明確に分けることができ、Dockerfileの可読性と管理が容易になります。
使いどころ
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ビルドが必要な言語やフレームワーク
Go、Java、Node.jsなどのコンパイルが必要なアプリケーションは、ビルド専用のステージを使って効率的に最終イメージを作成できます。 -
複数の依存関係を持つプロジェクト
複雑な依存関係がある場合、最初のステージで依存関係を管理し、最終ステージではアプリケーションのみを含めることで、クリーンな環境を実現できます。
まとめ
Dockerのマルチステージビルドは、ビルドプロセスを複数のステージに分けることで、最終的に軽量で効率的なイメージを作成する強力な方法です。特に、ビルドツールや不要なファイルを最終イメージから除外できる点で、セキュリティとパフォーマンスの両方にメリットがあります。
これからDockerイメージを作成する際には、マルチステージビルドを活用して、効率的で軽量なイメージを作成してみてください。