【証券分析2-1】個人投資家はなぜインデックス投資をすべきなのか

ファイナンス理論

前回は、なぜ株式市場に投資をすべきと言えるのか、少し経済学的な知見を交えながら考えてみました。結論としては、株式市場に投資をするのは合理的と言えそうだということが分かりました。今回はその次の選択肢としてどのように株式投資を行うかという部分を考えていきます。
株式投資のスタイルをどのように分類するかは様々にありますがよく用いられるのは、アクティブ投資とパッシブ投資という分類になります。
投資初心者はパッシブ投資をメインに行うべきということがよく言われます。
中でもよくおすすめされるのが、S&Pや全世界株式のインデックスに連動するインデックス投資を行うというものではないでしょうか。

今回は、なぜ個人投資家はパッシブ投資をすべきなのか考えてみたいと思います。

アクティブ投資ではパッシブ投資を上回る成果を出せないから

これはよく言われる説明だと思いますが、アクティブ投資の成果がパッシブ投資の成果を上回らないからというものです。
その根拠としてよく挙げられるのが、
効率的市場仮説という理論をベースにしたものと、
過去データから実証分析を行うものの
大きく2つです。
効率的市場仮説については、ここでは詳細は述べませんが、市場が効率的であるとするならば、
最適なポートフォリオは時価総額加重平均ポートフォリオすなわちインデックス投資になるというものです。
2つ目の過去データを用いたものは、投資信託を使ってファンドマネージャーがインデックスに勝てているのか検証した場合には、多くのファンドマネージャーはインデックスに負けているという結論を得ます。プロのファンドマネージャーでさえそう簡単にインデックスに勝てるわけではないのであれば、個人投資家はよほどのことがない限り勝つことは難しいと考えられます。
そこで基本的には、投資判断が必要なくほったらかしで大丈夫なインデックス投資を長期で積立投資することがおすすめされるのです。

コストに見合わないから

これをもう少し深掘って考えてみます。
単純に能力として、プロの投資家に個人投資家は勝たなければならないという部分もありますが、最も考えるべきは、アクティブ投資を行うにあたって使うリソース(コスト)に対して、得られるリターンは十分に大きいのかという部分ではないでしょうか?

仮に、ある個人投資家と、あるファンドマネージャの2人がインデックスファンドに勝つことができる投資戦略を知っているとしましょう。この戦略はインデックスファンドに比べて、2%の超過収益を得られると仮定します。この時、個人投資家はこの運用をするために使える資金は多くても数千万から1億程度ではないでしょうか。それに対して、ファンドマネージャーは数百億程度の資金を元に運用します。ここで、個人投資家は多めに見積もって運用額1億、ファンドマネージャーは少し少なめに見積もって101億運用するとしても、リターンの差は101億×2%-1億×2%=2億になります。

つまり、同じ戦略を使っていても、運用資産額次第で得られる利益は大きく異なってくるのです。しかし、金額が大きくなっても、それに対して増える手間はほとんどありません。取引コストが変わってくる、運用額によっては、戦略が使えなくなるなどの問題は発生するかもしれませんが、ここでは本質的ではないので、無視します。

したがって、プロに比べて少ない運用資産しか持たない個人投資家は、その時点でアクティブ投資を行うコスパが悪いということになります。
もう少しイメージしやすくすると、先ほどの戦略を実行するためには、毎日3時間のリサーチと年間200万円のデータの利用が必要だと仮定しましょう。この時、個人投資家は年間200万の利益を得てもそれがデータの料金だけで消えてしまいます。
リサーチの労力さえも賄えないのです。
一方のプロ投資家は、これらの費用を引いても十分な利益が残ります。正確には、プロ投資家自身の利益は給与であり、投資信託などの場合には信託報酬が利益となりますので、構造はことなりますが、運用資産額の大きさが、アクティブ投資を行うかの意思決定に重要な役割を果たしていることが理解いただけるのではないでしょうか。

個人的には、アクティブ投資がインデックスに勝てるかという問題だけでなく、アクティブ投資によって発生する労力に対して見合った利益を得られるのかを考えるべきだと思います。

アクティブ投資信託ならどうなのか?

アクティブ投資を取り入れるには自分でポートフォリオを作る以外にもアクティブ投資を行っている投資信託を購入するという方法があります。この方法であればプロが考えた戦略を使うことになるので個人投資家が戦略を考えて運用する場合よりもより良い戦略が存在している可能性はありますが、アクティブ投資信託の質も様々であるため本当に超過リターンを得られる投資信託を見分けるコストが今度は発生してしまいます。結局のところ自分で株式からポートフォリオを構築するのか、投資信託からポートフォリオを構築するのかという違いに過ぎないということになります。
ですので基本的には、一般的な個人投資家は投資にかかる手間がほとんどかからず、運用に生じるコストも安いインデックス投資行うことが合理的だと考えられます。

アクティブ投資は不要なのか?

それでは、アクティブ投資はいらないのでしょうか?必ずしもそうとは言えません。インデックスファンドを始めとするパッシブ投資が効率的であるためにはアクティブ投資の存在が欠かせないのです。もしアクティブ投資が行われなくなってしまうと、その分、市場に非効率が生じてしまいます。この非効率な部分を利益の源泉としているのがアクティブ投資ですが、アクティブ投資がなくなると、その取引が行われなくなるため非効率性が放置されてしまいます。このような場合であればこの非効率性を収益の源泉にした戦略を取ることが可能になります。みんなが地面にお金が落ちていることはないと思っていれば、たまたま地面に落ちていたお金が拾われる可能性は低くなりますが、逆にみんなが地面に落ちているかもと思ってそれを探していればすぐに拾われてしまいます。このようにパッシブ投資が有効であるためにはアクティブ投資の存在も重要になるのです。
ここまでの内容は、金融市場にアクティブ投資が必要である理由になりますが、個人レベルで考えた時にはどうなのでしょうか。
もしも、あなたがすでに、インデックス投資を上回る収益を上げることができる戦略を知っていて、そこで得られる利益がその戦略を維持するために必要なコストを上回るのであれば、もちろんアクティブ投資を行うべきでしょう。
しかし、100%確実にインデックス投資を上回れる戦略というのは早々見つかるものではないと思います。そのために戦略を研究したり企業を分析したりといったコストを考えると、正直そう簡単には見合ったリターンが得られるとは思えませんが、もし、戦略を見つける過程、戦略を実際に実行していく過程、食べてないよ寒いそのものを楽しめるのであれば、アクティブ投資を行ってみるのも一つの選択肢かもしれません。

タイトルとURLをコピーしました