【証券分析1-1】株式投資をするべき理由を経済学的に考えてみる

ファイナンス理論

2024年から、新NISAが始まり多くの人がどのように資産運用を行っていけばいいか悩んでいるかと思います。

少し調べると多くの場合、手数料の安いインデックスファンドと呼ばれる指数連動型の株式投資信託がおすすめされていると思います。例えばS&P500に連動する株式投資信託やMSCI Kokusaiに連動する株式投資信託などが挙げられます。

ですが、そもそもなぜ株式に投資すべきなのでしょうか?
株式市場は長期的には成長するので長期投資をすればかなりの確率で資産が増えるというのはよく言われますが、それはなぜなのでしょうか?

今回は、株価が上昇する理由について経済学をベースにに考えてみたいと思います。

過去データをベースに考えると

株式投資を行うべき理由としてよく挙げられるのは、過去のシミュレーション結果として、例えば1980年から100万円投資していれば今いくらになっていますといったような例だと思います。
確かに、過去20年、30年あるいはもっと長い期間で見ると株式市場は右肩上がりに上昇しており、昔、投資していれば大きな利益をあげられたというのはよく示されます。
しかし、過去上昇したからといって、今後も上昇する根拠はあるのでしょうか?
例えば、日本株の場合トピックスは1950年頃から1989年のバブル崩壊までは右肩上がりにほぼ株価は上昇していますが、そこから大きく株価は下落し、その後、現在に至るまで過去最高値を更新していません。部分的な期間で見れば2012年頃から2024年にかけては比較的上昇していますが、長期間で見た場合に日本株の例ですとあまり株価は上昇していないと言えます。
S&Pの場合、超長期で見ても基本的に右肩上がりに株価が上昇していますが、果たしてこの右肩上がりの上昇は今後も続いていくと考えていいのでしょうか?
過去データを見るだけではこの疑問に対して回答することができません。この疑問を解消するためには、なぜ株価は上昇するのかというところを考える必要があります。

なぜ株価は上昇するのか

株価の上昇要因は様々あります。
– 会社の決算が良かった
– 景気がいい
– ある技術が開発されその技術に関わる企業の株が上昇する
などなど非常に多くの要因によって株価は変化します。
株価が上昇する要因をきれいに整理するのは非常に難しく、そもそもなぜ株価が上昇するのか明確に説明できればどの株を買えばいいかなども簡単にわかるようになるかと思います。しかし株式市場はそのような単純なものではありません。
ですがここでは、長期的に株式市場に投資することを検討したいので、長期で見た時に株価が上昇する理由を単純化して考えてみたいと思います。

株価は企業価値を反映する

株価を、もう少し経済を考える上で扱いやすいものに置き換えるとそれは企業価値になります。企業価値が上昇すれば株価は上昇し企業価値が下落すれば株価は下落します。
決算が良くて株価が上昇するのは決算のいい企業の価値は高くなっているからです。
逆に、不祥事に関するニュースも出た株価は下がりますがこれは、不祥事を行っている企業は行っていない企業よりも価値は低いと考えられるからです。
企業価値の構成要素はこのように考えると様々あります。前者の決算に関わるような場合には、基本的には財務諸表の値から読み取られる企業が持つ資産に由来すると考えることができます。
一方で後者の不祥事に関するニュースといったものは財務諸表には瞬時に反映されるものではありません。
ですが、少し長期的な目線で考えると不祥事を起こした企業は製品が売れにくくなり、その分利益も減少するといったような流れを考えることができます。財務諸表の数値がニュース発表時は動かないですが、それても株価が動くのは、株式市場は現在の企業価値についてているだけではなく、将来の企業価値の変化も反映して動くからです。

企業価値は利益の積み重ね

しかし、長期的に考える場合には、企業価値は、財務諸表に示される株式価値つまりは純資産(正確にはさらに細かく分類できるがここでは大枠として純資産で考える)に収斂していくと考えることができます。実際の株価はその株が割安か割高かといったような部分も持っているので(いわゆるPBRと言われる要素)必ずしも純資産に一致するわけではありませんが、基本的には純資産の変化に対して株価は連動すると考えることができます。(ただし、株価は市場参加者の期待によって割安割高といった影響を受けるので、この部分も株価収益を考える上では考慮が必要です。今回はこの部分は無視して単純化して考えていきます。)

では純資産とは、どのように増加減少するのでしょうか?
当然、株式発行によって資金調達を行った場合にはこの純資産は変動しますが、今はその部分は考えずに企業の事業活動(本業)との関係性のみを考えるとします。企業は何らかの事業によって売上を建てます。そこから必要な経費や税金、資金調達に伴う利息、配当など様々なものを売り上げから控除して残った部分が純利益として毎期蓄積されていきます。したがって、企業の事業活動によって生み出された利益の一部は株式価値に還元されていると考えることができます。
よって、企業が利益を増やせば株式も上昇すると考えられます。

企業の利益が増加するとはどういうことか?

ここまでの議論によって、企業の利益が増加すれば株は上昇するということが分かりました。
これだけ書くとそれは当たり前のことだなと感じるかと思います。
しかし、ここまでの議論では財務諸表どの関連性も考えながら企業利益と株価の関係を考えることができました。では企業の利益が増加するのはどのような時なのでしょうか?
単独の企業の利益の増加について考えるだけであれば、
– 新製品を開発した
– 企業のブランドが向上して売り上げが伸びた
など様々な個社要因を考えることができますが、今は株式市場全体の成長について考えたいので、全ての企業の利益の総和が増加するのはどのような時なのか考えてみたいと思います。
これを考える上で役に立つのが経済学で基本として学ぶ三面等価の法則です。
三面等価の法則の詳細についてはここでは紹介しませんが、社会全体の生産と消費と所得が等しくなるというのが基本的な結論です。

企業の利益が上昇するというのは売り上げが増加するか費用が減少するかの2つです。
売上の増加に関しては社会全体の生産と関連します。全ての企業の売り上げを合わせると社会全体の生産になるかと思います。したがって、売上の増加は社会全体の生産の増加を意味しており、これはつまり、社会全体の生産が増加すれば企業利益も増加することを示しています。もちろんそれ以上に費用が増加する可能性もありますが、基本的にある会社の費用の増加は、別の会社の生産の増加もしくはそこで働く人の所得の増加と考えることができます。
社会全体が成長すれば、企業利益も増加し株も上昇するという流れを考えることができます。社会全体の成長というのはいわゆる経済成長と捉えることができます。時々、株式投資は世界経済の成長に投資をすることだということが言われますが、これはこういった背景を理解するとイメージしやすいのではないかと思います。

どのような時に経済は成長するのか

ここからはもう少し掘り下げて、どのような時に経済は成長するのかということを考えてみたいと思います。
経済成長の理論は、経済学でも基本的な理論として学びますがここでは、詳細は紹介せずにイメージとして紹介することにします。
先ほどの続きとして、社会全体の生産や消費、所得が増加するのはどのような状況なのかを考えてみます。
大きく2つの要因を今回は考えます。一つは人口の増加、もう一つは技術革新です。

人口増加

人口が増加すると、その分社会全体の消費が増加すると考えることができます。社会全体の消費が増加するということはそれに伴って生産や所得も増加しているということになりますので経済は成長しています。

技術革新

もう一つの技術革新に関しては技術革新が起こることによって同じ労力や資源を使ってより効率的に多くの生産をすることができるようになるので社会全体の生産量も増えると考えることができます。

一部の先進国ではすでに人口減少が始まっているため、1つ目の要因である人口の増加に基づく経済成長は見込めない可能性があります。
一方で、2つ目の技術革新については、決まった上限が理論上存在するわけではなく、今後も技術革新が起き、それに伴う経済成長は生じると考えることができます。

まとめ

今後の経済が成長すると仮定するならば、株式に投資するということは合理的だと考えられます。
一方で、経済が成長しなければ株は上昇しない可能性もあるということを意識しておかなくてはいけません。例えば、景気後退や戦争が長期で経済が成長しないようなケースでは株式のリターンもマイナスになる可能性が高いということになります。
しかし、基本的には引き続き世界全体の人口は増加し、技術革新も進むと関g萎えられることから経済成長はプラスを維持し、結果として、株式リターンもプラスになっていくと考えられるのではないでしょうか。

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