グラフニューラルネットワーク(GNN)とは

AI・機械学習

グラフニューラルネットワークとは

グラフニューラルネットワーク(GNN, Graph Neural Network)は、グラフデータに対して適用できるディープラーニングモデルです。グラフデータはノード(頂点)とエッジ(辺)で構成されており、例えばソーシャルネットワーク、分子構造、知識グラフなど、さまざまな分野でグラフは頻繁に使われています。

GNNの目的は、ノード、エッジ、グラフ全体の特徴を学習し、その後、分類や予測などのタスクに利用することです。GNNは、グラフ構造を活かして、各ノードが近隣の情報を集約する形で、特徴を更新していく層(layer)を持ちます。

GNNの基本構造

GNNでは、各ノードが持つ特徴ベクトルを、グラフ構造に基づいて何層にもわたって伝播させることで、ノード間の情報を相互に集約していきます。以下がGNNの基本的な流れです。

  1. ノードの初期特徴ベクトルを設定: グラフの各ノードに特徴ベクトルを割り当てます。例えば、ソーシャルネットワークであれば、各ユーザーに年齢や興味関心の情報を持たせることができます。
  2. 近隣ノードの情報を集約: 各ノードは、隣接するノードから特徴ベクトルを集約します。これはエッジを通じた情報のやりとりを意味します。
  3. 集約した情報を使ってノードの特徴を更新: 各層で、集約した情報を基にノードの特徴を更新します。
  4. 繰り返し集約・更新: このプロセスを複数回繰り返すことで、遠くのノードの情報も間接的に伝播し、最終的にグラフ全体の情報を反映したノード表現が得られます。

GNNの各層の計算プロセス

GNNの各層での計算は、「集約」「更新」の2つのステップで進行します。これを具体的な例で見ていきます。

例:シンプルなグラフ構造

まず、簡単なグラフを考えてみましょう。このグラフには3つのノードと、それらを繋ぐエッジがあります。

    1
   / \
  2 - 3

ノード1, 2, 3はエッジでつながっており、それぞれ特徴ベクトルを持っています。以下のような初期の特徴ベクトルを仮定します。

  • ノード1: h_1 = [1, 2]
  • ノード2: h_2 = [2, 1]
  • ノード3: h_3 = [0, 1]

ステップ1:近隣ノードの情報を集約する

各ノードは、隣接するノードから情報を集約します。この集約方法はいくつかありますが、一般的な手法の一つが「加算」または「平均化」です。

例えば、ノード1はノード2とノード3から情報を集めます。集約ステップでは、次のように隣接するノードの特徴ベクトルを単純に足し合わせます。

  • ノード1の集約情報: h_2 + h_3 = [2, 1] + [0, 1] = [2, 2]
  • ノード2の集約情報: h_1 + h_3 = [1, 2] + [0, 1] = [1, 3]
  • ノード3の集約情報: h_1 + h_2 = [1, 2] + [2, 1] = [3, 3]

この集約のステップは、ノードが直接繋がっている隣接ノードから得た情報を集める意味を持ちます。ここでは単純な加算を使っていますが、他の集約方法としては平均や最大値を取る手法もあります。

ステップ2:ノードの特徴を更新する

次に、集約した情報を用いて、各ノードの特徴を更新します。この更新ステップでは、通常は学習可能な重み行列を用いて、線形変換と非線形活性化関数を適用します。

例えば、重み行列 W を以下のように設定し、活性化関数にReLU(Rectified Linear Unit)を用いるとします。

W = [[0.5, 0.2],
     [0.1, 0.4]]

ノード1の更新は次のように計算されます。

  1. 集約情報に重み行列を適用します。
    W * h_agg_1 = W * [2, 2] = [0.5*2 + 0.2*2, 0.1*2 + 0.4*2] = [1.4, 1.0]
  2. 非線形活性化関数ReLUを適用します。
    ReLUは、負の値を0にする関数です。
    ReLU([1.4, 1.0]) = [1.4, 1.0]

同様にして、他のノードの特徴も更新されます。

  • ノード2の更新: ReLU(W * h_agg_2) = ReLU([0.7, 1.3]) = [0.7, 1.3]
  • ノード3の更新: ReLU(W * h_agg_3) = ReLU([1.8, 1.6]) = [1.8, 1.6]

これで、各ノードが近隣から集めた情報に基づいて新しい特徴を持つようになりました。

ステップ3:繰り返し更新

この集約・更新のプロセスを複数回繰り返すことで、ノードはより広範な隣接ノードの情報を集約できるようになります。例えば、2層目の集約では、各ノードは隣接ノードの隣接ノードの情報も取り込むため、直接繋がっていないノードの情報も考慮できるようになります。

GNNのバリエーション

GNNにはさまざまなアーキテクチャが存在し、集約や更新の方法に工夫を加えています。

  • Graph Convolutional Networks(GCN): グラフの隣接行列を用いて、各ノードの特徴を重み付け平均するアプローチ。
  • Graph Attention Networks(GAT): 隣接ノードの重要度を学習し、それに基づいて集約する手法。Attention機構を利用することで、異なる隣接ノードに異なる重要度を付与。
  • GraphSAGE: 隣接ノードのサンプリングに基づいて集約を行うことで、大規模なグラフにも対応可能な手法。

まとめ

グラフニューラルネットワーク(GNN)は、グラフ構造データに対して非常に効果的な学習モデルであり、ノードの情報を集約し、更新していくことで、複雑な関係性をモデル化します。GNNの各層では、ノードの特徴を隣接ノードの情報を基に集約し、学習可能な重み行列を通じて特徴ベクトルを更新します。この集約と更新のプロセスを繰り返すことで、ノードはより広範なグラフの情報を統合した表現を獲得します。

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