今回は運用パフォーマンスを評価する上で最も重要な要素であるリターンの評価方法について紹介していきます。運用を行う上では、実際に取引を行ってポートフォリオを作成するだけでなく、その結果を評価してその後の運用の改善につなげる必要があります。
リターンの計算方法
投資のリターンには大きく以下の2種類があります。
1. キャピタルゲイン
2. インカムゲイン
キャピタルゲイン
キャピタルゲインは値上がり益のことで、購入した金額と売却した金額の差額になります。
ロングオンリー(買いもちのみ)で考えると、売却した金額の方が購入した金額よりも高い場合は、キャピタルゲイン、逆に売却した金額の方が購入した金額よりも安い場合には、キャピタルロスになります。
この部分は一般的に収益として認識されやすい部分になるでしょう。
インカムゲイン
もう一つのリターンは配当などのインカムゲインにあたります。
リターン考える際には、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を合わせたトータルリターンを考えます。
期間 t のインカムゲインを$i_{t}$、購入時の価格を$p_{t-1}$、売却時の価格を$p_{t}$とした場合に、
この期間のトータルリターンは以下のような数式で表せます。
つまり、配当などのインカムゲインと売却時と購入時の差額であるキャピタルゲインを、元々の購入価格で割った値がトータルリターンになります。
これはt期間あたりのトータルリターンになりますが、1期間あたりのリターンに直したい場合にはルート t乗
で求められます。
計算期間の途中に追加で購入や売却を行った場合
先ほどは 期間 t において ずっと保有し続けた場合を考えました。ですが実際の運用においては、途中で追加で購入したり、一部を売却したりするようなケースも考えられます。このような場合、全体の期間を通してのリターンはどのように計算できるのでしょうか。
この場合には大きく以下の2つのリターン計算方法があります。
1. 時間加重収益率
2. 金額加重収益率
i期のポートフォリオの総額(期末の追加資金を入れる前)を$P_{i}$、i期末の追加資金額を$C_{i}$として考えてみます。
例えば、次のような具体例を考えます。
最初は$P_{0}$=100万で1期目の終わりにそのポートフォリオは$P_{1}$=110万、そして、そこで$C_{1}$=10万の追加投資をして、2期目の終わりに$P_{2}$=100万となった場合です。
時間加重収益率
時間加重収益率を考える場合には、各期間ごとに追加投資を行う前のリターンを求めて、それらを掛け合わせます。最後に1期間あたりのリターンを求めます。これを数式で表すと以下のようになります。
具体例の場合は次のようになります。
まず、各期間のリターンを求めます。
– 1期目のリターン
ここで、$ P_0 = 100万 $、$ P_1 = 110万 $ なので、
- 2期目のリターン
ここで、$ P_1 = 110万 $、$ C_1 = 10万 $、$ P_2 = 100万 $ なので、
時間加重収益率は、各期間のリターンを掛け合わせた後、全体の期間数のルートを取ることで求められます。
計算すると、
したがって、この期間の1期間あたりのリターンは
となり、-4.26%であることがわかります。
金額加重収益率
金額加重収益率の場合は、最終的なポートフォリオの金額をベースとして、内部収益率を求めるイメージになります。
具体的には以下のような数式になります。
ここで、$t_{i}$はi期までの期間とします。つまり、$T-t_{i}$は追加資金$C_{i}$を運用した期間になります。これをrについて解いた値が金額加重収益率になります。
具体例を用いて、金額加重収益率(内部収益率, IRR)を求める方法を見てみます。
- 初期投資: $P_0 = 100万円$
- 1期目の終わりのポートフォリオの価値: $P_1 = 110万円$
- 1期目の終わりに追加投資: $C_1 = 10万円$
- 2期目の終わりのポートフォリオの価値: $P_2 = 100万円$
ですので、
となります。
条件を代入して、具体的な数式を立てます。
この式を展開して整理します。
この二次方程式を解くことで内部収益率$r$を求めます。
二次方程式の解の公式を使います。
ここで、$a = 100$, $b = 210$, $c = 10$ です。
2つの解が得られます。
現実的な運用のリターンを考えると、より適切な解は$r_1 \approx -0.04875$(約-4.875%)となります。
したがって、金額加重収益率は約-4.875%になります
時間荷重収益率と金額加重収益率の違い
ここまで、期間の途中に追加の資金流入や資金流出がある場合のリターン計算方法として、大きく2つのリターン計算方法について見てきました。この2つにはどのような違いがあるのか確認してみます。
最も大きな違いは、時間加重収益率の場合には前期末にポートフォリオの時価総額を知る必要があるということです。一方で金額荷重収益率の場合には、最終的なポートフォリオの時価総額と、最初の時価総額、そして追加的な資金の金額が分かれば収益率を計算することができます。
時間荷重収益率の場合は、廃棄罰ごとにその期間の収益率を求めているので、キャッシュフローの影響を除去することができます。
得られるデータの違いなどによってどちらを選択するか決めることができます。