投資における PDCAサイクル
様々なことで PDCAサイクルというものは用いられていますが、この PDCAサイクルは投資にも適用可能です。
投資の場合、
1. 計画:運用目標を決定し、資産配分や具体的な投資手法を検討、決定する
2. 実行:実際にポートフォリオを作成し売買を行う。
3. 評価:運用パフォーマンスを評価する
4. 改善:投資手法や戦略を見直す。
といった流れになります。
投資の基本方針を決める(計画)
運用を行うに当たってまず初めに決めるべきことは、運用の目標と、基本的な方針になります。
年金などの機関投資家においては、かなり綿密な運用方針を決定し投資制政策を決めた投資政策書などを作成します。
個人の場合そこまで大規模なものは必要ありませんが、基本的な運用方針については最初に決めておくことで、途中で非合理的な意思決定をしてしまう可能性を減らせます。
運用方針を決めていない場合、例えば大規模な下落相場を経験した時に、資産を売却してしまい、その結果その後に上昇した時の戻りを得ることができず、大きな損失が発生してしまったといったことが生じかねません。一方で、あらかじめ長期の積立投資をすると決めていたような場合には、下落相場で売りたくなっても、踏みとどまれる可能性は高くなります。
運用における一貫性を保つためには、運用の基本方針について考えることは非常に重要です。
運用目標の決定(計画)
まずはじめに、考えるべきことは運用の目標になります。あわせて運用の目的も確認しておきます。運用の目的を考えることは具体的なイメージを持つためには役に立ちますが、運用手法の選択においてはそれほど意味を持たないのではないかと思っています。というのは、結局のところそれほど運用手法そのものには影響を与えることは少ないと思います。なぜなら基本的にどのような目的であれ、効率よく資金を増やしたいということは共通しており、得られるリスクあたりのリターンが最も大きくなるのが効率的な投資と言えるからです。
ただし、運用の目的によって、資金が必要になるまでの時期とその金額が異なってきます。その結果、取れるリスク量が変わってくるので、どのくらいの金額をリスク資産に割り当てるのかといったところには影響を与えます。
基本的に運用目標や目的を考える上で決定すべきといわれる項目は、以下の3つになります。
– 許容リスク
– 投資期間
– 目標リターン
許容リスクは、どのくらいの金額まで失っても耐えられるかを示すものになります。例えば10万円ぐらいの損失には耐えられるのか、それとも100万円ぐらいまでは耐えられるのかといったことになります。
許容リスクについては、実際の運用目的に照らし合わせて考えてもいいかもしれません。
例えば、老後の資金として20年分の資金を用意したいと考えているとします。この時月に1万円くらい、老後の資金が減っても耐えられると思うなら、1万円×12ヶ月×20年=240万円が許容リスクになるイメージです。
投資期間は、資金が必要となるまでの期間を表します。老後の資金に当てたいなら、65歳になるまでの期間、子供の大学資金に当てたいなら子供が入学するまでの期間といったようなイメージになります。運用期間は目的によって変わってきますが、結局のところ、それまでの期間で最も効率のよい運用を行いたいということは変わらないので、いつまでにという目標はそれほど投資手法の選択には影響しないと思います。1年間運用する場合でも、10年間運用する場合でも、同じ1年で見たときにリスクが同じなら、よりリターンの得られる方法を使いたいものです。
最後に目標リターンの決定ですが、正直これを合理的に決めるのは、ほぼ不可能だと思います。そもそも、同じだけのリスクを取るならば、最も多くのリターンが得られる方法が最も最適な運用方法になります。
従って、もし全ての運用方法のリスクあたりのリターン水準があらかじめわかるならば、許容リスク水準が決定すれば、それに応じて最適な投資方法は決定し、得られるリターンも決まります。もちろんあらかじめパフォーマンスを予測すること自体がかなり不可能に近いのですが、目標リターンを決めたところで、それが運用手法の意思決定に影響する程度は非常に少ないのではないかと個人的には考えています。
ただし、年金や機関投資家の一般的な運用目標としては、無リスク金利(損失無しで得られる金利、国債や預金のイメージ)+3~6%が標準的な水準になります。
ここまでを整理すると、個人的には、許容リスク水準を決定することが最も重要で、運用期間とリターン目標についてはイメージや参考のために考えておくといいのではないかと思います。
投資対象と資産配分の決定(計画)
許容リスク水準が決められたら次は、どのような投資対象で運用をしていくのか考えます。また、それらの投資対象にどのくらいの資金を割り当てるのかも合わせて考えます。リスクの推定方法は様々にありますが、許容損失額を基に、その損失額に見合った天体の投資金額を逆算することで、ある程度どのくらいの資金を投資するか決めることができます。もともと投資したい金額が決まっている場合はそれをどのように配分するか決めてもいいと思います。
どのような投資対象にどのくらい投資をしていくのかを決めるためには、どのような投資哲学のもとに運用を行っていくかということがベースになるので、これが正解というものを示すのは難しいので、ここでは特に紹介しません。
例えば、国内外の株式債券に投資を行うのか、国内の株式だけに投資を行うのか、不動産投資や コモディティ 投資も含めるのかなどなどを決めます。
そして、それぞれの投資対象にどのくらいずつ投資を行うのかを決めます。これらの過程は一般的にアセトアロケーションと呼ばれアセットアロケーションか実際の運用パフォーマンスには非常に大きな影響を与えると言われています。
運用スタイルの決定(計画)
各投資資産にどのくらいの金額投資するかを決めたら、どのように運用を行っていくのか決めます。
例えば国内外の株式に100万円投資すると決めた場合、パッシブ運用を行いたいので、コストの低いインデックス投資信託を選ぶ、自分で銘柄選択をしたいので、アクティブ運用を自分で行う。などといったことを決めます。
アクティブ運用を行う場合には、あわせてどのような戦略に基づいて運用を行っていくのか決定します。またアクティブ運用を行う場合にはベンチマークを合わせて決めます。例えば国内の株式でアクティブ運用を行うなら、TOPIXをベンチマークに設定するなどといったことになります。
ポートフォリオを構築して実際に運用を行う(実行)
ここまでの戦略が決定したら、実際に決定した株や投資信託などを購入してポートフォリオを構築します。この部分が実行にあたります。
パフォーマンス評価(評価)
ある程度の期間運用を行ったら、パフォーマンスを評価する必要があります。
例えば、どのくらいのリターンとリスクだったのか。その結果はベンチマークに対して、良かったのか悪かったのか。
今回のパフォーマンスは特定の業種や特定の銘柄のリターンに起因しているのか、それとも満遍なく様々な投資対象が上昇しているのかといったことを確認します
この評価のプロセスには、様々な手法が存在するので今後の記事で細かく扱っていきたいと思います。
投資戦略の見直し(改善)
パフォーマンスを評価したら、具体的にどのような部分が問題になっているのか考えます。
例えば特定の業種にリスクが偏り過ぎていたことが、大きな問題かもしれません。そのような場合にはより多くの業種に分散して投資をすることでリスクを軽減できる可能性があります。
まとめ
今回は 一般的によく使われる PDCAサイクルを投資に当てはめた場合にどのように行っていくのか見ていきました。それぞれのプロセスにかかる時間は、どのような投資手法を選択するかによって大きく異なります。例えばパッシブ運用を選択した場合には、ほぼ全てのプロセスで、ほとんど時間はかからないでしょう。最初にリスク許容度を考えて投資にいくら資金を投じるかというところを考えるのに時間かかるぐらいでしょうか。逆にアクティブ運用を選択した場合には、かなりの時間がかかる可能性があります。どのくらいの資金をどの資産に投じるのか、またそれぞれの資産においてどのような投資戦略を用いるのか、実際のパフォーマンスを分析して問題点を洗い出し改善を行う、などなど非常に多くのプロセスが発生します。