アクティブ運用の良し悪しを評価する

投資・ファイナンス

アクティブ運用を行う場合誰もがパフォーマンスを高めたいと思うと思います。ここで今回はアクティブ運用のパフォーマンスを分解して、アクティブ運用のパフォーマンスにはどのような要素が重要なのか考えてみたいと思います。

アクティブ運用のパフォーマンス評価

まずはアクティブ運用のパフォーマンスをどのように評価するのか見ていきます。アクティブ運用の場合には対象となるベンチマークに対してどのくらいリスクあたり多くのリターンを稼げたかということが重要になります。
例えばトピックスをベンチマークとするような場合、運用しているポートフォリオのパフォーマンスが+5%だったとして、その時にトピックスが3%を上昇している場合と10%上昇している場合では、同じ5%のリターンでも、トピックスが3%上昇している時の方がより価値が高いと思います。このようにベンチマークに対して、どのくらい効率よくリターンを上げているかというのを測る指標がインフォメーションレシオ(IR) という指標になります。
IR は次のような数式で定義されます。


$\alpha$はベンチマークに対するポートフォリオの超過リターン、TE はベンチマークに対するポートフォリオやりたいの標準偏差を示すトラッキングエラーになります。
つまりベンチマークから乖離する度合いに対して、どのくらいベンチマークに対して追加的な収益を得られたかというのを測っているイメージになります。
一般的なパフォーマンスの評価指標として、シャープレシオがありますかこれとイメージとしては同じ形になります。どちらも、リスクあたりどのくらいのリターンが得られたのかというのを比較しています。基本的にリスクが大きいほどリターンは高くリスクが小さいほどリターンは小さくなるという特性があるので、単純にリターンの大きさを比べるだけでは適切にパフォーマンスを評価することはできません。そこでリターンをリスクで割って、同じリスク量に対してどのくらいのリターンが得られたのかということを比較してパフォーマンスを評価します。

超過リターンを分解する

ポートフォリオの超過リターンは、各銘柄のアクティブウェイトにアクティブリターンを掛け合わせたものとして定義されます。つまり数式で表すと、$r_{i}$を銘柄のリターン、$r_{b}$をベンチマークのリターン、$w_{i}$を銘柄のウェイト、$w_{b}$をベンチマークウェイトとして、


となります。
つまり、アルファを大きくするためには、当たり前ですが、超過リターンが大きいと思われる銘柄をオーバーウェイトして、強化リターンが小さい銘柄をアンダーウェイトすることになります。
とはいえ事前にどの銘柄の超過リターンが高いのか低いのか、とうことは完全にはわかりません。
したがってアクティブ運用のポートフォリオ構築のプロセスは大きく2つのプロセスに分類できます。
まずはじめに、各銘柄の超過リターンを予測するプロセス、そして次に、予測した超過リターンに対して、どのようにウェイティングを行うか決定するプロセスの2つになります。
そもそも、超過リターンの高い銘柄を予測できていなければウェイティングを頑張ったところで結果は得られませんし、逆に、いくらうまく超過リターンの高い銘柄を予測できていてもウェイティングがうまくできていなければその利点をしっかりと生かすことができません。
これらを整理して、アクティブ運用の基本法則としてあげられるのが、Grinold and Kahnが次のような関係式になります。


ICは情報係数と呼ばれる値で、これは予測リターンと実際の超過リターンの相関関係を示すものになります。つまりプロセスの1つ目の、超過リターンの予測能力を示している部分になります。
次のBRはプレスと呼ばれる変数で、意思決定を行う回数を示しています。つまり、何回予測を行うかを示した変数になります。IC が高い つまり 予測能力が高い ならば、より多くの銘柄に対して予測を行うことによって、より多くの超過的な収益を得られます。それを示しているのがこのブレス部分になります。
最後にポートフォリオの超過リターンの水準を得るためにはトラッキングエラーを掛け合わせます。

この両辺をトラッキングエラーで割ると、最初に確認した IR を得ることができます。つまり、
$IR=IC \cdot \sqrt(BR)$と表すことができます。

この式から、アクティブ運用でパフォーマンスを上げるためには、
1. 銘柄のリターン予測能力を上げること
2. 予測能力を維持したまま予測対象の銘柄を増やすこと
の2つが重要であることがわかります.

実運用における制約

理論的には予測能力と、予測回数が重要であることがここまでで確認できました。
しかし、実際のポートフォリオ構築においては、超過リターンが高いと予測できた銘柄でも、流動性が低いと言った理由や、あまりにも小型株過ぎるといったような理由で必ずしも予測をポートフォリオに反映できないことがあります。その他にも空売りできないといった制約や、コストの制約などによって、実際の予測をポートフォリオに反映できないケースがあります。
この要因を加味して先ほどの議論を一般化したのが、どのくらい予測をポートフォリオに反映できたかという相関係数であるTCという概念を導入して、


という数式になります。
ポートフォリオ構築における制約が全くなく 予測を全て反映できる場合には TC は1になります。基本的には PC は0より大きい値になると考えられます。

まとめ

ここまでを整理すると、アクティブ運用においてパフォーマンスを高めるためには次の3つの要素が重要になります。
1. 銘柄の超過リターン予測能力を高めること
2. 予測範囲(銘柄)を増やすこと
3. 予測をポートフォリオに可能な限り反映させること
多くの投資家は1つ目の超過リターンの予測能力を高めることにかなり重点を置いていると思います。もちろん予測能力を高めることは非常に重要ですが、(それができないとそもそもアクティブ運用でリターンを出すことはできませんが)リターンの予測能力を高めることが難しくても、カバレッジを広げて予測対象の銘柄を増やしたり、ポートフォリオの制約を緩めてより予測を反映しやすいポートフォリオ構築をしたりといったことでも、アクティブ運用としてのパフォーマンスは上がることを感じていただけたらと思います。

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